金曜日, 6月 30, 2006

貧乏姉妹物語 第01話

酷い話だった。
何が酷いかと言えば、姉妹のキャラクターを立てる前に感動的な話を作ろうとする脚本家だ。(実は原作自体がそうなのだろうか?だとしたら原作者が酷い。)
姉妹が置かれている状況は、アバンでの亡くなった姉妹の母親と姉妹の台詞で理解できた。(正直、そういうやり方で説明されるのは好きではないが)
設定は理解できたものの、彼女達の行動がさっぱり理解出来なかった。
何故なら、姉妹それぞれの価値観や姉妹がお互いをどう思っているのかを示す前に物語を進行させてしまったからだ。
例えば、浴衣一つ取ってみても、去年の花火大会まで姉は自分だけ浴衣を着て妹を連れて行っていたようだが、どうしてそんな事をしたのだろうか?
もし、妹思いの姉だったら、たとえ着たいと思っていても花火大会には絶対に浴衣を着て行かない。
妹とお揃いの浴衣が用意できるまで、じっと我慢するはずだ。
浴衣が着られない妹の気持ちを考えれば、着たくても着られないだろう。
だが姉はそうしなかった。
という事は、姉は妹の事を何とも思っていない事になる。
もし、妹の事を何とも思っていないのなら浴衣なんか買ったりするはずがない。
一体、姉は何を考えているのだろうか?
僕にはさっぱり理解できない。
また、妹も妹で「お姉ちゃんと屋台めぐりをする」という目的の為とはいえ、浴衣を返品してお金を返してもらおうとする行動が理解できなかった。
どうしてそのような発想に至るのだろうか?
そもそも、返品してお金を返してもらうという知識はどこで手に入れたのだろうか?(母親?姉?それとも父親?)
それまでの姉妹の生活が描かれていないので、小学生がそういう発想をする事自体が僕の想像を超えていた。
(僕がこの妹くらいの歳の頃は、買った品物を返品してお金を返してもらうという事自体、全く知らなかったし想像すらした事が無かった。その頃は自分で買い物を殆どしていなかったせいもあったが。)
もし、妹に浴衣の事を教えるのが目的であれば、別に浴衣を返しに行かせなくても、妹に「お姉ちゃんのバカ!」と言わせて部屋を飛び出させた後、途中で洋品店のおばちゃんに会わせれば良いと思う。(洋品店のおばちゃんは、お得意様の所へ向かう途中にでもしておけば不自然ではないだろう。)

あと、事の発端となった貯金箱だが、あれは誰の貯金箱だったのだろうか?
もし、姉の貯金箱だったとしたら、妹がお釣りを貯金箱に入れるのはおかしい。
もし、妹の貯金箱だったとしたら、姉が妹の為とは言え、その貯金箱に手を付けるというのもおかしい。
(先に挙げたが、姉は妹の事を何とも思っていないのであれば、姉が貯金箱に手を付けても理解できるが、お金の使い道が妹の浴衣を買う、というのは何とも奇妙だ。妹の事を想っているのならば、妹の貯金箱には絶対に手を付けない。)
もし、2人共通の貯金箱だとしたら、一体、何の目的で貯金していたのだろう?
使途について、2人で話し合わなかったのだろうか?
話し合っていないからこそ、今回の事件が起こったのだろうが、それもまたおかしな話だ。
どうして2人で貯金箱のお金の使い道について話し合っていないのだろう?
僕はどうしても、脚本家(または原作者)が2人を喧嘩させる→お互いの気持ちを知って反省→仲直りの感動話を作ろうと考えた結果、2人に貯金の使い道を話し合わせなかったようにしか思えないのだ。
もし、金銭面の使い道を姉が全て取り仕切っているのであれば、こんな喧嘩は起こらないはずだ。(妹は不満に思うのだろうが、それがこの姉妹の間でのルールなのだから、不承不承ながら納得するだろう。というより、納得するしかない。)

もう一つ、気になったのは亡くなった母親の存在だ。
母親が姉妹を気にかけている描写はあるが、姉妹が母親を想う描写が無いように見えた。(あったのかもしれないが、もしそうだとしたら、見落としたか印象に残らなかったのだろう)
うがった見方をしてしまうが、どうも母親も感動的な要素の一つとして用意したような感じがしてならない。
確かに、最後のシーンで姉妹が抱き合う所で母親が姉妹を包み込むような感じで立っていて「ああ、母親の愛情を表現しているんだろうなぁ」と感じる事が出来たが、どうしてもあざとさは拭いきれなかった。
母親を出す意味は、恐らく今後の展開で明らかにされるのだろうが、今の段階ではただの感動要員でしかないように思える。

今回の話は、貧しい姉妹がどういう価値観を持って日々の生活を送っているのかを説明する話にして欲しかった。
はっきり言えば、今回の話は別に貧乏な姉妹の設定でなくても出来る話だ。
貧乏という設定は、築40年のボロアパートの小汚い部屋に住んでいる所と貧しい食生活の所しか生かされていない。
貧乏という環境が人間の思考や行動にどんな影響を与えるのか、そこを表現した上で感動的な話を作れるなら作った方が良いと思う。

今回は兎に角、貯金箱に金の重みが全く感じられなかったのが一番の問題だ。
今回のエピソードはもっと後に、極端な話、最終回でやるべきだろう。
夏の花火大会でお姉ちゃんと一緒に屋台でおいしいものを食べるんだ!という気持ちを込めて、初回から貯金箱に少しずつ少しずつ、妹がお金を貯めていって、最終回で今回のエピソードをやったら、僕は完全に妹に感情移入できただろう。
お姉ちゃん、貴女のやった事は妹の為とはいえ、ちょっと酷いだろう、と感じる事が出来ただろうし、妹が激怒して浴衣を返品しようとした行動も理解出来ただろう。
折角の感動的なエピソードを、こんな詰まらない形で使ってしまうのは非常にもったいないと思う。

最後に。
感想を書いている最中で気付いたのだが、姉妹に親戚は居ないのだろうか?
もし居ないのであれば、児童相談所等の施設にどうして行かないのだろうか?
アパートの大家は何を考えて姉妹を住まわせているのだろうか?
次回にでもこれらの疑問に答えて欲しいものだ。




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